刻雲録

言霊の幸う国で、言葉が見せる風景を感じる

かなしみよ

悲しみが見える


遠くでひっそり


悲しみは微かな火を灯す


真夜中の淡雪のなかで


新緑をかきわける木漏れ日のなかで


日暮れの街並みに浮かぶ窓のなかで


私の青ざめた心のなかで


小さく


慎ましく


微笑ましく


狂おしいほどに愛しい悲しみよ


代え難く美しい悲しみよ


鋭く


冷たく


憐れみをもって


この私を断罪せよ