刻雲録

言霊の幸う国で、言葉が見せる風景を感じる

夏の終わり

夏の終わりの寂しさが胸の内を激しく打つ遠くに響く雷のように飛沫を上げる夕立のように 夏の終わりに背を向けて僕らは、またここに集う何から逃げてきたのか問わず誰を求めてきたかも聞かず 二度は来ない夏の大空に命を燃やし尽くすと誓い世界に抗い組伏せ…

月下美人

海のような命の深淵に置き捨てられた永遠を一筋の光が照らし出す月は今宵も寂夜を抉る愛しい君の幻影が月の下に輪郭を晒す取り戻せぬ時の代わりに在りし日々が静寂(しじま)にさざめく悔いも嘆きも月の下にこぼれ落ちては夢の跡微かな逢瀬の残り香をひしと抱…

明日

咥えたたばこに血がついてた そのわけを知ることも叶わない 口の中は鉄の臭いで充たされて 俺は明日のことを考えてた この頃は振り返ることもしない 日毎に生きることに汚れを感じる それでも何かにしがみつこうとしている 俺はただ安らかに寝たいだけなのに…

雨に濡れる君にみとれる ネオンライトの明かりの傘に 憩う誠の素直さよ

かなしみよ

悲しみが見える 遠くでひっそり 悲しみは微かな火を灯す 真夜中の淡雪のなかで 新緑をかきわける木漏れ日のなかで 日暮れの街並みに浮かぶ窓のなかで 私の青ざめた心のなかで 小さく 慎ましく 微笑ましく 狂おしいほどに愛しい悲しみよ 代え難く美しい悲しみ…